いそだ @isoda_seari
お題:「夜の交差点」「笑う幽霊」 帰宅途中、クラスで必ず「出る」と話題の交差点を通らないと家に帰れない。僕にはあいにくその感覚というものが備わっていないようなので、その「出る」ものの正体も知らなければ、「出た」自覚さえもなく、その噂はあくまで噂としか認識していなかった。 クラスメイトたちがその話題を口にする度、毎日あそこを通るなんて怖くないの、とか、既に呪われてるんじゃねーの? とか、肘を小突き合いながら口走る。それを耳にしても尚、僕は恐ろしさなど全く感じない。 教室の端で空を見上げながら、そんな訳がないと聞き流すのが日課だった。 だって、僕が幽霊になったとして通りすがりの人を呪う目的がない。そうする意味がわからない。 ……じゃあ、僕ならどうするだろう? 友人たちの怖がる声を背に考えてみた。 ーーそうだな、僕ならむしろ、本当に人に見えない、聞こえないものなのか試してみたくなる。脅かすとか呪うとか、そんな方法じゃなくて……敢えて笑わせてみるのはどうだろうか?ーー そこまで考えて、放課後のチャイムが鳴った。クラスメイトの各々がガタガタと席や椅子を揺らして部活や帰路へ急ぐ足音。僕もすっと立ち上がる。その足取りで部室へと向かった。 部活の時間が終わり、日もすっかり暮れた頃に件の交差点を通る。 点滅した街灯の他は特になにもない、住宅街のありふれた交差点。その下まで辿り着いて辺りを見渡してみる。 やはり、いない。僕以外は誰もいない。 少し、待ってみようか……なんて考えて、街灯のポールに背を預けて座り込んでみる。 暫くすると遠くからふらふらとライトを照らした灯りが近づいてくる。目を凝らしてみると、今日、幽霊の噂をしていたクラスメイトのひとりだ。 ……ここでふと、日中のことを思い出す。彼もこの場所を怖がっている様子だった。確かめに来たのだろう。 安心させてやろうと、僕は彼がこの交差点を通るのを待ち構える。 「やぁ! ……ふふふ、」 ーー何ともない交差点でしょ、大丈夫だよ。 そう続けようとしたところで、クラスメイトは手にしていたライトを投げ捨てて駆け出す。足元に転がるライトを拾って返したかった。けど、ライトは指をすり抜ける。 ……僕は、幽霊を見たことがない。 僕、以外の。